ハトとの接触に注意を:妊婦や免疫力低下の方に潜む感染症リスク
街中や公園でよく見かけ、平和の象徴とも言われる、とても身近な存在の「ハト」。
しかし感染症の観点で見ると、妊婦や免疫力が低下している人には特に注意が必要です。
ハトが媒介する感染症のひとつに「オウム病」(クラミジア・シッタシ)という病気があります。この菌は、鳥類から人に感染することがわかっています。
妊婦に感染した場合、重症化する恐れがある大変危険な感染症です。過去には妊婦がオウム病で亡くなった例も報告されているため、妊娠中は公園などハトが集まる場所を避けるようにすすめられています。
また、「トキソプラズマ症」といわれる病気もあります。トキソプラズマという寄生虫による感染症で、野生のハトが感染していることが多く、引っかかれたり、つつかれたりした場合に感染するリスクがあります。
このトキソプラズマは、特に妊婦が感染すると、胎児に奇形などのリスクをもたらすため、妊娠中はハトに近づかない方が良いとされています。
さらに、ハトのフンには「クリプトコッカス症」や「ヒストプラズマ症」という病気を引き起こす真菌が含まれることがあります。
クリプトコッカスは、免疫力が低下している人が感染すると全身に広がるうえ、とりわけ脳に障害を引き起こすことがあり、最悪の場合、命に関わることもあります。
HIV陽性者や手術後の抗がん剤治療を受けている患者など免疫力の低い状態の人は悪化しやすく、感染すると長期にわたる強力な抗真菌薬治療が必要となり、副作用という別のリスクも高まります。
このように、ハトはかわいい反面、感染症を媒介する恐れもある生き物です。
妊娠中の人や免疫が弱い状態にある人は、公園や神社などハトが集まる場所を避けることが推奨されています。しかし、上記に当てはまらない人でも感染の可能性はあります。
多くの人がハトに関連する感染症のリスクを理解し、ハトにエサを与えないなど、あらかじめ感染対策を講じることが大切です。